発信!社会事業家インタビュー/学校法人アジア学院 副校長兼事務局長 荒川朋子

ユースインターン5期生のえがまり(小野寺真里)の社会事業家インタビューの記事を発信します。

 

今回の取材先は、アジア学院に深く関わる副校長兼事務局長の荒川朋子さんです。

ご覧下さい。

 

※本プロジェクトは、中古本を若者支援の寄付に変える「ホンdeチャレンジ」(協力:株式会社バリューブックス)の寄付を使わせて頂いております。

(新築中のコイノニアハウス)
(新築中のコイノニアハウス)

"アジア学院"

 那須塩原市の雄大な自然の中に、アジア学院のキャンパスはある。ここには畑や田んぼ、豚舎、食品加工棟、コンポスト(堆肥場)、ベクレルセンター(放射能測定所)などが備わっている。アジア学院は鶴川学院伝道神学校(東京都町田市)の東南アジア科を母体としてアジア、アフリカ、太平洋地域で草の根で農村開発に携わる専門家を養成するために、1973年に栃木県那須塩原市に設立された。アジア学院の使命は、「イエス・キリストの愛に基づき、公式且つ平和で健全な環境を持つ世界を構築すること。」であり、この使命に基づき、人々と共に分かち合う生き方を目指して、実践に力を置いた学びを行なっている。具体的には、授業で学んで得た知識を活かし、多文化、多宗教のアジア学院コミュニティーを基盤として、グループに分かれて食料自給のための農場管理活動を行ったり、日本各地の農村地域や都市部に研修に行ったりする。
 

 アジア学院の学生たちは9ヶ月の研修を経て、世界各地へ羽ばたき、その地域の問題解決のために取り組んでいく。創設者の高見敏弘牧師は、アジア学院設立に至るまで、「食」の課題に取り組む農村牧師の育成の仕事に携わっており、更に広く発展途上国の人々を受け入れ農村リーダーを育成するためにアジア学院を設立した。アジア学院の敷地内に入ると、さまざまな国から来たアジア学院の学生達に会うことができる。ここはどこなのか、日本ではなく別世界にいるような感覚になる。
 

 今回、アジア学院の事務局長・副校長であり、アジア学院に17年間勤務し、多くの卒業生を世界中に送り出している荒川朋子さんにお話を伺った。農業指導者だけでなく、さまざまな分野で活躍している人々を輩出しているアジア学院において、学生たちを育成する立場にいる荒川さんに、アジア学院にかける想いや希望などについて語っていただいた。

 

"共に生きるために"
 アジア学院は、「共に生きるために」ということをモットーに、国籍、宗教、習慣、価値観の違う人々が共に生活し、お互いの持っている資源や能力を分かち合いながら、それぞれが持つ目的や目標のために取り組んでいる。「共に生きる」とは、具体的には、人とともに、自然とともに、神とともにという3つのことから成り立っていると考えている。この考え方を基に、活動を行っている。「人に仕える指導者」を研修のキーコンセプトの一つにしており、さまざまな地域からやってきた農業に携わる地域のリーダーだけでなく、いままで全く農業に携わったことのなかった学生などもいる。実習の時には学生達はチームに分かれ、農業の経験値は違っていても、ここではだれもが平等であるため、全員一度はリーダーにならなければならない。そのため、異文化の中でお互いに、どうすれば信頼関係を築くことができるのか、地域の問題解決のために人々と協力するにはどうしたらいいのか、他者と共に生活をしてお互いに切磋琢磨することによって、リーダーとしての振る舞い方を身につけていく。また、荒川さんは、アジア学院で学生達に農業や労働の尊厳に気付いてほしいと語る。

 

 アジア学院には、発展途上国から農業の技術を学びにきている学生が多く、発展途上国の農民は、過酷な生活や生き延びるための競争から、農業や農民が尊いものであるということを見いだせない環境にあるそうだ。しかし、アジア学院での人々との関わりあいや、学校での学びから、学生たちが新たな視点を持ち、自分たちの農村や農業の素晴しさにも気づくことによって、誇りを持ちながら、人々とともにその土地に根ざした生き方をしてほしい欲しいという願いがある。

"フードライフ"
 フードライフとは、アジア学院特有の言葉で、「たべものと命は供に切り離すことができない」という事を示す。アジア学院では食料をほぼ自給しており、化学肥料や農薬は一切使わない有機農法で野菜や家畜を育てている。有機農業にこだわる理由も、「共に生きるために」というモットーや、フードライフという考え方に基づいている。発展途上国では生産性を上げるために借金をして化学肥料や危険な農薬を買い、それが深刻な地力低下や環境問題、健康被害を引き起こしている。アジア学院では「ぼかし」という有機肥料や、地域の給食センターからいただいた給食の食べ残しなどを利用して家畜のえさまでも作り、野菜や家畜を育てている。学生達は担当があり、田畑で働いたり、家畜の世話をしたり、食事を作るなど、交代でたべもの作りに携わっている。アジア学院では、資源の循環を重視し、持続可能な農業に実践的に取り組んでいる。

 

 荒川さんは、たべものは命であり、命はたべものによって育まれるので「農業は人を輝かせてくれる」という。また、食べものは一人では作れない。そして人間の力だけでも作れない。荒川さんはアジア学院での生活を通してそのことを感じているそうだ。フードライフの考え方は、食べものや農業から離れている私達の生活の原点であると語る。

 

 アジア学院では、“beyond organic”(有機農業の先にあるもの)、つまり「有機農業を通して、どのような社会を作っていくのか」ということを日々の生活の中で、一人ひとりが模索しながら生活している。食卓に豊かなたべものがあることは平和の象徴なのではないかと荒川さんは語る。世界中の食卓が豊かになることが平和に繋がる。アジア学院では、食べるということが共通の窓となり、さまざまな国の人々が集い、平和な世界を構築するために自分にできることを探しながら人々と協力し合って生活しているのだ。

 

"もっと自分と世界を見てほしい"
 荒川さんが、アジア学院で働いていて、うれしい時、やりがいを感じるのは、学生達がアジア学院での経験を生きる原動力としてそれぞれが色んな地域で頑張っている姿を見たときだと話す。学生達は、卒業前にひとりひとり自分の夢を発表して巣立っていくが、その夢が国の政治や家族の事情でなかなかうまくいかない場合もある。しかし、学生達はみないつか夢をかなえたい、アジア学院や、お世話になった人々に恩返しがしたという思いで夢を追いかけ続けているそうだ。卒業生同士がネットワークを作り、卒業後も協力して、お互いに励ましあいながらそれぞれの問題解決にも取り組んでいる。卒業生に会うと、アジア学院での生活を鮮明に語ってくれ、アジア学院での生活を宝物や誇りにしてくれているという。それを通して、荒川さん自身も、アジア学院を続けていかなければいけないという励みにつながると語ってくれた。また、アジア学院は80%が寄付金で成り立っている。支援者の方々が何かしらのきっかけでアジア学院を支え続けてくれ、つながりを持ってくれている。その思いがみえたときも嬉しさを感じるそうだ。これからも、アジア学院が人々や地域の架け橋となっていたいと語ってくれた。

"ストイックでシンプルな生き方"
 荒川さんがアジア学院と出会ったのは、高校2年生の時だった。

 高校の講演会で高見さんとアジア学院のことを知り、アジア学院のことが心に残っていたそうだ。大学では、アメリカ留学を経験しており、そこで初めて農業について学んだという。農業は人間の基本であるにもかかわらず、それまで農業を知らなかったことを反省したそうだ。その後、大学院に進学し、アジア学院で3か月インターンを経験した。

 

 幼いころからガールスカウトでのキャンプに参加し、大学ではワンダーフォーゲル部で登山をしていた荒川さんにとって、アジア学院での生活は、山を登った時のように生きるのに必要なもの以外は持たずに、ストイックでシンプルに生活することと同じであり、アジア学院での生活に惹かれていったという。またその時に出会った、ルームメイトのスリランカ出身の女性の生き様や境遇が自分とあまりにも違うことから、いかに今まで自分が恵まれて生きてきたのかを改めて感じたそうだ。

 

 途上国で生きることの厳しさ、生きるためのさまざまな努力、自分が過酷な環境の中で生きているにもかかわらず、自分よりもさらに困っている人々に手を差し伸べようとしているアジア学院の学生たちの姿に感銘を受け、それから自分に余力があるならば、途上国の人々のために自分にできることをしていきたいと思うようになったという。

 

 アジア学院はもちろんのこと、荒川さん自身の新たな使命として、3.11後の放射能問題から、もとの大地に戻すために周辺地域の方々と協力しながらさまざまなプロジェクトに取り組んでいるそうだ。放射能問題というひとつのテーマに向かって協力し合うことで、地域の方々とのつながりもさらに強くなったという。アジア学院が地域や世界との「窓口」になっているのだ。

 

"もっと目をみひらいて"
 最後に荒川さんが若者に向けて、「日本に固執しすぎず、もっと心と目を見開いて世界の中の自分を見てほしい。世界中でいろんなことが起きているなかで、自分のアンテナを張り、どんな逆境をも潜り抜ける想像力、自己判断できる力を身につけてほしい。」と語ってくれた。

 
 荒川さん自身が、世界の中の自分を見ることで生まれた価値観や命に対する考え、想いがアジア学院と共鳴し、それが他の多くの人々の想いとつながり合い、その結果さまざまな問題に取り組む学生がアジア学院から世界中へ羽ばたいているのだと感じた。

 

(文責:TEAMユースインターンシップ5期生
小野寺真里 / 宇都宮大学国際学部3年)

 

学校法人 アジア学院

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